※前回の日記よりお読みください
私が何もしないから、旦那さまは自分で冷やすための氷を台所へ取りに行った。…あ、トランクスに穴が開いている。
冷凍庫から保冷剤をだして、太ももにあてたと思ったら、蛇口をひねって、頭を濡らしだした。
…何をしたいのかしら?
頭がおかしくなったのかしら?そう思いながらハンバーグを口に入れたときだ。
何を思ったのか、旦那さまは台所から全力疾走をして私の頬をつねった。
冗談じゃなく、痛い。
「…痛いでしょ!何をするのよ!」
全身全霊の平手打ちをお見舞いすると、たたかれた左頬をうれしそうにさすっている。
「何よ、脳みそまで筋肉っていわれたけど、ついに脳みそがかにみそにでもなったわけ?」
まだかにみそは食べられるけど。
旦那さまは、何を考えたか私の腕をガシッとつかんだ。そして、涙目になって言った。
「夢じゃ…ないんだな…?」
「夢じゃないわよ。本当よ。だって、全部痛かったり熱かったり、感覚が働いたでしょう?あなたの子どもよ」
私の言葉に、旦那さまは天高く手を突き上げて、ガッツポーズをした。
「やったぁぁぁぁぁ!!」
私と旦那さまの間には子どもは出来ないと言われていた。何をしても生まれないと。だけど私たちは子どもが大好きで、絶対にほしいと思っていた。だからあきらめなかった。
苦痛にも思える時間を過ごして、ようやく授かった子どもだ。
旦那さまの行動もわからなくもないかも。私もそうしたかったもの。人前だから出来なかっただけで。
旦那さまはぴたっとお腹に額をあてる。
「まだまた普通だな」
「そりゃそうよ。いきなり大きくなられても困るわ。こっちにだってママになる覚悟をする時間もらわなきゃ」
大体、これからが大変だ。気持ち悪くなってご飯も食べられなくなるだろう。お腹だってだんだん大きくなるだろうし。最大のイベント出産は鼻から西瓜を出すぐらい痛いってきいてるんだから。猶予もらって覚悟を決めなくてはならない。それに、これから生まれてくる子どもにとっていいママになるための勉強もしたいし。
出産ってのは、楽じゃないんだからね?
私がどう思ってるか知らない旦那さまは、お腹の子どもに話し掛ける。
「よく授かったな。俺がパパだ」
まだきこえてないわよ。なんて言わずに私がかわりにきくことにした。
「お前はな、パパとママがずっとほしかった子どもなんだ。本音を言えば五体満足で生まれてきてほしい。だけど無理だったら仕方ない。たとえ何か体に不自由があってもパパとママはお前を大切にする。お前は、神様がくれた大切な“贈り物”なんだからな!だから、早く生まれてこい。お前には見せたいものがいっぱいあるんだから!」
私は思わず旦那さまを抱き締めた。驚く旦那さまを無視して、私も話し掛ける。
「あら、パパはまだ不安よね?今だに落ち着かないし、やりたいことやるときがあるし。だけどきっと貴方が生まれてくるときまでにはきっといいパパと、ママになっているわ。だから安心して生まれていらっしゃい」
「おいおいおい。どう言う意味だよ?」
「そういう意味よ。私も貴方も勉強不足なんだから、しなくちゃね」
「ちぇっ。俺勉強嫌いだけど仕方ないなぁ」
神様からのたった一つの“贈り物”。
私たちは貴方を待っている。
だからどうか。生まれてきて。
貴方は望まれなくて生まれてきたわけじゃない。
みんな、望まれて生まれてくるんだから。
たとえ悪魔でも、愛しちゃうんだから!
神様、ありがとう。